大麻は国大麻は国や地域によって法律が異なりますが、健康への影響については過去20年で多くの研究が進みました。ここでは、国際的な医学誌に掲載された確かなエビデンスのみを使って、大麻の副作用をわかりやすく解説します。
まず、大麻のリスクは次の状況で高まりやすいことがわかっています。
- 思春期など若年期からの使用
- THC濃度の高い製品の使用
- 長期間・高頻度の使用
これらは「因果関係が確定」しているわけではありませんが、多くの研究で強い関連が示されています。
他の薬との比較でわかる大麻の位置づけ

大麻には副作用がありますが、
「危険か安全か」ではなく、他の薬と性質が異なると考える方が正確です。
それぞれの薬と比較すると、大麻の特徴がよりはっきり見えてきます。
強い鎮痛薬(麻薬性鎮痛薬)
オピオイドは強い鎮痛薬ですが、呼吸が止まる危険があり、過剰摂取による死亡例が世界的な問題になっています。
大麻は呼吸抑制を起こさないため、急性中毒による致死性は非常に低いとされています。
依存についても、オピオイドは非常に強い依存性がありますが、大麻の依存は軽度〜中等度で、命に関わる離脱症状はほぼありません。
結論:致命的リスクはオピオイドの方が圧倒的に高い。
一般的な抗不安薬・睡眠薬
ベンゾジアゼピンは、記憶障害・ふらつき・転倒・強い依存など、多くのリスクが知られています。
大麻も注意力の低下がありますが、呼吸抑制や命に関わる急性反応はほとんどありません。
依存の面でも、大麻はベンゾほど強くありません。
結論:急性毒性と依存性はベンゾの方が強い。
代表的な抗うつ薬
SSRIは飲み始めに不安が強くなったり、性機能低下が起こることがありますが、依存がつく薬ではありません。
大麻は、人によって不安が悪化したり、長期使用で軽い依存が起こることがあります。
結論:依存は大麻のほうがやや高いが、全身の副作用はSSRIのほうが軽い。
睡眠導入薬
睡眠導入薬はもうろう状態や記憶障害を起こしやすく、特に高齢者では転倒事故の原因になります。
大麻も眠気を強くしますが、意識消失や呼吸抑制はほぼ見られません。
結論:転倒リスクは睡眠導入薬のほうが明確に高い。
抗精神病薬
抗精神病薬は体重増加・糖尿病・代謝異常などの強い副作用があります。
一方、大麻は身体への負担は小さいものの、精神病リスク(特に高THC)を高めることが報告されています。
結論:身体への影響は抗精神病薬が重く、精神症状のリスクは大麻のほうが強い。
アルコール
アルコールは肝硬変・依存・脳萎縮・事故など、身体への影響が非常に大きい物質です。
大麻は肝毒性がほとんどなく、致死的中毒もほぼありません。
結論:身体的ダメージはアルコールの方が圧倒的に強い。
| 比較項目 | 大麻 | 他の薬物治療 |
|---|---|---|
| 肝臓・腎臓の毒性 | ほぼ無し | 多くの薬で中〜高 |
| 代謝・体重・血糖への影響 | ほぼ無し | 抗精神病薬・抗うつ薬に強く存在 |
| 命に関わる副作用 | なし | オピオイド・ベンゾは高い |
| 依存性 | 中程度 | オピオイド・ベンゾは強い |
| 精神病リスク | 高THCで上昇 | 多くの薬でなし |
| 若年脳への影響 | 大きい | ほぼなし |
大麻で起きやすい副作用
大麻依存(Cannabis Use Disorder)
生涯使用者の 約9〜10%、高頻度使用者で 15〜30% で依存が成立。
精神病(統合失調症など)のリスク上昇
一般的な使用で 約2倍、高THC常用で 3〜5倍 に上昇。
大麻誘発性精神病 → 統合失調症移行リスク
大麻誘発性精神病を経験した人は、統合失調症へ移行リスクが1.5〜2倍。(非使用者と比べて)
無気力・意欲低下(アパシー)
依存症レベルで発生率が明確に上昇。
認知機能の低下
重度使用が長期化すると、IQが 6〜8ポイント低下(思春期から使用した場合)。
うつ病・不安障害のリスク
依存レベルの使用で、1.5〜2倍に上昇。
自殺念慮・自殺企図リスク
リスクが1.5〜2.5倍の関連。メンタル疾患の併存が影響していると考えられる。
呼吸器への影響(喫煙の場合)
慢性気管支炎のリスクは上昇。肺がんは「証拠不十分」。
妊娠中の使用と出生影響
低出生体重が 約1.5〜2倍 に上昇。
思春期使用と脳発達
構造変化・認知低下が有意に上昇。
※本記事は、国内外の医学論文にもとづく学術情報の提供(教育目的)として作成しており、特定の薬や医薬品・医療行為・大麻製品の使用を推奨するものではありません。
また、日本では医療目的を含めて大麻の使用・所持・栽培は法律で禁止されています。
本記事の内容は、日本国内での使用や治療を前提としたものではありません。
治療に関する判断は、必ず医師などの医療専門職と相談の上、各国の法令に従って行ってください。
引用元
以下は、上記内容のエビデンスとして使用した主要なレビュー・ガイドラインです。
- National Center for Biotechnology Information (NCBI): Opioids and respiratory depression
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK470415/ - Centers for Disease Control and Prevention (CDC): Opioid prescribing guidelines
https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/65/rr/rr6501e1.htm - Cannabis acute toxicity & safety review (PMC)
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7030877/ - Cannabinoid dependence and withdrawal (SAGE Journals)
https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/0269881120986393 - Benzodiazepine risks (MDPI)
https://www.mdpi.com/2035-8377/13/4/59 - Cannabis and mental health risks (MDPI)
https://www.mdpi.com/2673-5318/6/3/92 - National Academies of Sciences (NASEM, 2017)
“The Health Effects of Cannabis and Cannabinoids.”
https://nap.nationalacademies.org/catalog/24625/the-health-effects-of-cannabis-and-cannabinoids-the-current-state - Volkow ND et al. NEJM (2014)
“Adverse Health Effects of Marijuana Use.”
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMra1402309 - Moore THM et al. Lancet (2007)
“Cannabis use and risk of psychotic or affective outcomes.”
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0140673607603152 - Meier MH et al. PNAS (2012)
“Persistent cannabis users show neuropsychological decline from childhood to midlife.”
https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.1206820109 - CDC — Marijuana and Public Health
“Marijuana and Public Health.”
https://www.cdc.gov/marijuana/index.htm


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