医療大麻でがんは治る?副作用緩和から見える本当の可能性

医療大麻ががんの腫瘍を抑制するという話を聞いたことがありますか?

現在、実際に行われている、がんの大麻治療について、嘘偽りなくお話しします。

まず前臨床(マウス実験)では、THCやCBDを含む複数のカンナビノイドにより、腫瘍や転移の抑制が数多く報告されています。

実際に、当クリニックの院長が副所長を務める「ランシット大学の統合医療研究所」でも、医療大麻を用いたマウス実験で肺がんの腫瘍抑制に成功しています。

マウス実験に使われるTHCの用量はモデルにより幅があり、
・腹腔内投与では 5–15 mg/kg
・腫瘍局所投与では μg/日
の超微量でも腫瘍抑制効果を示した例があります。

これを体表面積(BSA)換算でヒトに置き換えると、体重60 kg想定でおおよそ24–73 mg/日のオーダーになります。

しかし実際のヒトでは、THCの精神作用が用量制限因子となり、臨床研究や実臨床で到達しうるのは 20–40 mg/日前後 で頭打ちになることが多いのが現実です。

さらに、人間のがんはマウスと比べて格段に複雑です。

遺伝子の多様性、免疫環境、低酸素や線維化などの腫瘍微小環境(TME)が作用を左右し、マウスモデルで得られた明快な抑制を元に、すぐさまにヒトの臨床試験に移行とはいかないのが実情です。

ですが、ヒトへの臨床試験が行われた例もあります。
以下は、スペインの悪性グリオーマに対するTHC投与の小規模試験での結果です。

  • 9名に腫瘍内カテーテルを通じてTHCを投与
  • 一部の症例で腫瘍増殖の抑制やアポトーシス誘導を確認(例:Ki67低下)  
  • 精神作用は軽度で、全般的に安全性は許容可能という報告あり

素晴らしい症例ですが、規模が小さく、確定的な結論には至っていません。
結論として、現時点での医療大麻の主な役割は、がん治療に伴う副作用の軽減です。

  • 化学療法誘発の吐き気
  • がん性疼痛
  • 食欲不振
  • 睡眠障害などの生活の質(QOL)

これらの改善効果は、米国のAmerican Society of Clinical Oncology(ASCO)が2024年に発表したガイドラインでも支持されています。

当院でも、がん治療の副作用緩和を目的に医療大麻を用いてきました。

その中で、一部の患者さんの腫瘍マーカーが下がったケースもあります。

ただそれは、“がんがカンナビノイドによりアポトーシス(死滅)した”というよりも、副作用が和らぎ、再び動けるようになったことで、患者さんが「気力」を取り戻すことができた。

その結果、腫瘍抑制につながったと私たちは考えています。

医療大麻だけでがんを死滅させるのは、まだ難しい。

けれども、がんと闘うために必要な第一歩は、副作用に打ち勝ち、気力を取り戻すことなのは間違いありません。

医療大麻だけが全てじゃありません。

私たちは、生活習慣の改善、伝統マッサージによる体質調整、体調を整えるハーブとともに、医療大麻を位置づけています。

すべてを併用することで、西洋医学では放置されがちな患者さんの「心」を守り、生きる力を取り戻すお手伝いをしていきたいと考えています。

がんから回復された患者さん、そのご家族の方が、涙を流してすごく感謝していると声をかけていただいた日を忘れません。

患者さんの体験談は、こちらの記事をご覧ください。

今も私たちは、誰かの暮らしを支える責任を背負っています。半端な気持ちではありません。

すべての人に理解してもらうのは難しい。
だけど、私たちは「もう苦しくて死んでしまいたい」と、そんなことを言わせないクリニックでありたいのです。

※本記事は、医師による監修のもと作成しています。
一般的な情報提供を目的としたものであり、医療相談の代わりにはなりません。
医療用大麻を使用する前には、必ず医師にご相談ください。

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