線維筋痛症では、「原因がわからない痛みが続く」「眠れない」「体が常に緊張している」など、説明がつかないつらさが日常に現れます。
その理由の1つとして、近年「エンドカンナビノイド欠乏症」という考え方が注目されています。
エンドカンナビノイド欠乏症とは、体の中で作られる痛みを調節する物質や、それを働かせる仕組みが弱くなる状態 のことです。

エンドカンナビノイドシステム(ECS)とは?
エンドカンナビノイド欠乏症を知るためには、まずエンドカンナビノイドシステムについて知りましょう。
ECSは、「神経・免疫・内分泌」の3つのバランスを調整する役割を持っており、 「痛み・睡眠・気分・免疫・ストレス」 など多義に関わる大切な仕組みです。

- 痛みを抑える
- 睡眠リズムを整える
- ストレスを緩和する
- 免疫や炎症を調整する
- 自律神経のバランスを取る
線維筋痛症でも起こりやすい症状です。
詳しくは以下の記事で、解説しています。

エンドカンナビノイド欠乏症(CECD)とは?
エンドカンナビノイド欠乏症は、ECSを働かせる材料(エンドカンナビノイド)が不足したり、ECS自体が十分に働かない状態を指します。
米国の神経学者 Ethan Russo 医師が提唱し、現在は以下のような反応が起きやすくなると考えられています。
- 慢性的な広範囲の痛み
ECSは痛みのブレーキの役割を担います - 神経が敏感になる
ECSは神経細胞の興奮を抑える役目を持っています - 睡眠が浅くなる
ECSは睡眠と覚醒のリズムを整えます - 気分が不安定になりやすい
ECSは感情を司る脳の扁桃体を落ち着かせます - ストレスに弱くなる
ECSはストレス反応が高まった後、身体を元の落ち着いた状態に戻す働きがあります - 炎症や免疫反応が乱れやすい
ECSは炎症の暴走を抑え、免疫のバランスを取る役割があります
こういった多方面の不調が一度に起きるのは、線維筋痛症の症状と非常によく似ています。
そのため、「線維筋痛症は、ECSが弱っている状態=CECDと関係しているのでは?」という考えが生まれています。
他にも、偏頭痛や過敏性腸症候群(IBS)など、未だ明確な原因のわかっていない疾患に関係している可能性が示唆されています。
なぜエンドカンナビノイド欠乏症は起こるのか?
エンドカンナビノイドシステムの働きが弱まる要因として、考えられているのは以下の通りです。
- 長期的なストレス
- 睡眠不足
- 過労や心身の負荷
- 慢性的な炎症
- 遺伝的な傾向
- ホルモンバランスの乱れ
- 自律神経の不調
これらの要因はすべて、エンドカンナビノイドを作る力を弱めたり、カンナビノイド受容体の働きを鈍らせる原因になります。
エンドカンナビノイドシステム(ECS)は本来、痛み・睡眠・不安・ストレス・炎症など、身体と心のバランスを保つ調整役として働いています。
しかし、慢性的なストレスや長期間の痛みが続くと、ECSはフル稼働したまま疲れきってしまうため、
- 内因性カンナビノイド(AEA/2-AG)の合成量が減り
- 受容体(CB1/CB2)の感受性が低下し
- 必要なときにブレーキをかけられず
- 痛み・不安・不眠がさらに悪化する
という悪循環が起こります。
特に線維筋痛症では、ECSが弱りやすい条件がほぼ揃っていると言われています。
そのためCECD(エンドカンナビノイド欠乏症)は、線維筋痛症で痛み・不安・倦怠感が続いてしまう理由を説明する非常に有力な仮説とされています。
エンドカンナビノイド欠乏症を治すには?
エンドカンナビノイド欠乏症を治すためには、ECSの働きを整えることが一番です。
ECSの働きを整えるための方法をご紹介します。
生活習慣
- 質の高い睡眠をとる
- 軽い運動やストレッチ
- ストレス緩和(マインドフルネス・呼吸法)
- 抗炎症的な食事
補完療法
- マッサージ
- 鍼
- ヨガや瞑想
- CBDなど合法成分の利用
医療大麻による治療に、注目が集まっています。
医療大麻はエンドカンナビノイド欠乏症にどう作用する?
医療大麻に含まれる、THC/CBDはエンドカンナビノイドシステムの働きを担う、カンナビノイド受容体に作用する成分です。
そのため、不足したエンドカンナビノイドの働きを補ったり、乱れたECSのバランスを整える方向に作用すると考えられています。
THC
CB1受容体を直接刺激し、以下に作用します。
- 痛み
- 感覚過敏
- 睡眠
CBD
エンドカンナビノイドを分解する酵素(FAAH)をブロックして、体内のアナンダミド量が増えやすくなります。
- 不安鎮静
- 自律神経安定
- 睡眠の改善
- 抗炎症

まとめ
エンドカンナビノイド欠乏症は、線維筋痛症の症状を説明できる有力な仮説の一つです。
医療大麻治療により、エンドカンナビノイドシステムを整えることで、症状の改善ができる場合があります。
当院は医療大麻を扱う、タイ・バンコクのクリニックです。


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