抗がん剤では、「吐き気」「痛み」「不眠」「倦怠感」「食欲不振」といった副作用が同時に現れ、生活の質(QOL)を大きく低下させることがあります。
近年、医療大麻(THC・CBDなどのカンナビノイド)が、こうした副作用を軽減する補助的療法として注目されています。
本記事では、抗がん剤の主な副作用がなぜ起こるのか、そして医療大麻がどのように作用して緩和を助けるのかを、科学と臨床の両面から解説します。
抗がん剤の主な副作用と、その原因
- 吐き気・嘔吐(CINV)
化学療法薬が脳の嘔吐中枢や腸のセロトニン経路を刺激し、急性・遅発性・予測性の嘔吐を引き起こします。 - 痛み
腫瘍による圧迫や神経障害、治療による炎症など、複数の要因が関係します。 - 食欲低下・体重減少
悪心や味覚変化に加え、炎症性サイトカインの増加によって代謝バランスが乱れます。 - 不眠・不安
身体的苦痛に加え、治療ストレスやホルモン変化が睡眠リズムを崩します。 - 末梢神経障害
プラチナ系やタキサン系抗がん剤に多く、手足のしびれや痛みを伴います。
さらに、こういった副作用は抗がん剤治療が終わった後にも、悩み続けるケースがあります。
約60%〜90%の方が後遺症や慢性的な健康問題を抱えています。
現代医療において、非常に大きな問題です。

症状別:医療大麻に期待できる効果
| 症状 | 主成分 | 期待される効果 |
|---|---|---|
| 吐き気・嘔吐 | THC | 制吐作用・嘔吐中枢の抑制 |
| 食欲低下 | THC | 食欲促進・摂取量改善 |
| 痛み・睡眠障害 | THC+CBD | 鎮痛・リラックス・入眠促進 |
| 不安・倦怠感 | CBD | 不安緩和・抗炎症・疲労軽減 |
| 神経障害 | CBD | 炎症抑制による間接的軽減 |
吐き気の抑制
THCの作用するCB1受容体は、吐き気や嘔吐を制御する領域にも存在します。
(脳幹にある延髄孤束核や最後野など)
この働きによって、抗がん剤の影響で過剰に活性化したセロトニン神経(5-HT経路)やドーパミン経路の活動が抑えられ、吐き気・嘔吐の神経信号が減少します。
さらに、腸内の神経にもCB1受容体があり、腸管から脳への嘔吐反射の伝達を弱めます。
このように、THCは中枢(脳)と末梢(腸)の両方で嘔吐を制御します。
摂食促進
THCは、視床下部弓状核にあるCB1受容体を刺激し、摂食行動を促すNPY/AgRPニューロンを活性化します。
同時に、摂食を抑制するPOMCニューロンの活動を抑えます。
また、嗅覚や味覚に関係する神経の感受性を高め、食べ物をより快く感じやすくします。
これらの作用を通じて、THCは摂食中枢と報酬系を活性化させ、食欲の回復や体重増加を促します。
鎮痛効果
THCは脊髄後角・視床・帯状回など、痛みを伝える神経経路にあるCB1受容体を刺激し、
痛みの信号を伝えるグルタミン酸やサブスタンスPの放出を抑えます。
その結果、痛覚信号の伝達が減少し、痛みの感じ方が和らぎます。
一方、CBDは免疫細胞のCB2受容体に作用して炎症性サイトカインの放出を抑え、
TRPV1チャネルの働きを調整することで末梢神経の過敏状態を緩和します。
さらに、CBDはTHCの精神作用を穏やかにしつつ、神経伝達抑制効果を補強するため、鎮痛・抗炎症・睡眠改善が同時に得られます。
抗不安・抗うつ作用
CBDは、脳内のセロトニン5-HT1A受容体に部分的に作用し、セロトニンの働きを高めることで不安や抑うつの軽減に関与します。
同時に、GABA-A受容体の働きを促進し、神経の過剰な興奮を抑えます。
また、海馬で神経成長因子(BDNF)の発現を促進し、ストレスで低下した神経活動を回復させます。
さらに、扁桃体の活動を抑制することで、不安や恐怖の反応を和らげます。
その結果、CBDは神経伝達と脳内ネットワークのバランスを整え、落ち着きと安定をもたらします。
医療大麻が作用する仕組み
人の体にはカンナビノイドが結合する受容体(CB1,CB2)が存在します。
THCやCBDは、この受容体を介して、神経や免疫・ホルモンのバランスを調整することができます。
- THC:脳や神経系にあるCB1受容体に働き、痛みや吐き気を緩和。
- CBD:免疫細胞や末梢神経のCB2受容体に働き、炎症や不安を抑える。
驚くべきは、受容体の数と分布の広さです。
これにより、痛み・吐き気・睡眠・食欲・気分など、複数の症状を同時に調整することが可能になります。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。

併用時の注意点
医療大麻は、抗がん剤・放射線・ホルモン療法と併用可能です。
ただ注意してほしい点もございます。
CBDは肝酵素(CYP3A4など)を阻害し、タモキシフェンやワルファリンなどの代謝に影響する可能性があります。
免疫療法(チェックポイント阻害薬)との併用では、効果低下の報告もあり、医師判断が必要です。
よくある質問
- どのくらいで効果を感じますか?
-
吐き気や入眠は数日以内、食欲や痛みの改善は1~3週間で変化を感じる方が多いです。
- 医療大麻だけで治療はできますか?
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あくまで副作用緩和を目的とした補助医療であり、標準治療と併用することで効果を最大化します。
- 日本人が医療大麻を使用しても合法ですか?
-
はい。日本人がタイで医師の診察を受け、正式に処方された医療大麻については、
日本国内に持ち込まず、タイ国内のみで使用する限り合法です。 - 免疫療法と併用できますか?
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一部研究では奏効率の低下が指摘されており、主治医と要相談です。
- 金額はいくらかかりますか?
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診察480THB、医療大麻オイル2500THBです。
まとめ
医療大麻は、抗がん剤による吐き気・痛み・不眠など生活の質を大きく下げる症状を、やさしく整える医療として活用できます。
科学的根拠と臨床経験を結びつけながら、患者の時間を取り戻す医療を私たちは目指しています
※本記事は一般的な医療情報であり、特定の患者様に対する診断・処方を目的としたものではありません。
使用をご希望の方は、必ず医師の診察を受け、主治医と相談の上でご検討ください。



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