THCとCBDの違いとは?症状別の使い分け

医療大麻が注目される中で、最も多くの人が混同するのが、「THC」と「CBD」という二つの成分です。

どちらも大麻草に含まれるカンナビノイドと呼ばれる天然化合物ですが、体への作用・使用目的・法律上の扱いまで大きく異なります。

この記事では、臨床研究や実際の医療現場のデータをもとに、THCとCBDの違いを解説します。

目次

THCとCBDの基本的な違い

THC(Δ⁹-テトラヒドロカンナビノール)とCBD(カンナビジオール)は、分子構造上わずかに異なるだけで、どちらも化学式は「C₂₁H₃₀O₂」。

しかし、原子の結合位置が異なることで、脳への作用がまったく変わります。

  • THCは脳内のCB1受容体に強く結合し、ドーパミン放出を促進。

    多幸感・時間感覚の変化・感覚の鋭敏化など、いわゆる「ハイ」の原因となります。
  • CBDはCB1やCB2受容体に直接結合せず、
    セロトニン受容体(5-HT1A)やバニロイド受容体(TRPV1)を介して、間接的にエンドカンナビノイドシステムを調整します。

    リラックス・抗不安・抗炎症・抗けいれんといった穏やかな作用を示します。

この結合パターンの違いこそが、THCが精神活性をもたらし、CBDはもたらさない理由です。

さらに知りたい方は、こちらの記事を読んでください。

THCの医療的可能性

THCは、がん・神経疾患・慢性疼痛などにおける強力な鎮痛作用と制吐作用が注目されています。

もともと痛み止めとして広く使われているのは、「オピオイド系鎮痛薬」や「NSAIDs」ですが、THCにはそれらとは異なる神経性疼痛への強みがあります。

THCの主な作用:

  • 化学療法による吐き気・嘔吐を抑制(米国FDA承認薬「ドロナビノール」)
  • 神経障害性疼痛・多発性硬化症に伴う筋けいれんの軽減
  • 食欲低下・体重減少の改善(がん・HIV/AIDS患者の臨床使用例多数)
  • 睡眠の質の改善、気分安定作用

既存の痛み止めとの違い

  • オピオイド鎮痛薬:強力に効く一方で、呼吸抑制や便秘、耐性・依存性が生じやすい。過量投与による死亡リスクもあります。
  • NSAIDs:軽〜中等度の痛みに有効ですが、胃潰瘍や腎機能障害、心血管リスクなどの副作用があります。

これに対してTHCは、脳内で痛みの感じ方そのものを調整するため、少量でも神経痛・がん性疼痛に効果を発揮します。

そして何より重要なのは、生命に関わる副作用(呼吸抑制など)がないという点です。

世界保健機関(WHO)も2018年に「THCおよびCBDは致死量を超える摂取が困難であり、依存形成リスクはアルコールやニコチンより低い」と報告しています。

一方での課題:

  • 精神作用(めまい・不安・動悸など)が用量制限因子となる
  • 反復使用による耐性・短期記憶の低下など
  • 高THC品種では、不快感やパニックを訴えるケースもある

だからこそ、これらは医師の管理下で少量から段階的に投与することが重要です。

CBDの医療応用と科学的根拠

CBDは、THCと異なり特定の受容体(CB1)に強く結合しないため、精神活性作用を起こしません。

そのかわり、神経・免疫・内分泌など複数のシステムに穏やかに働きかける多面的な調整作用を持ちます。

つまり、CBDは単一の症状に特化するというよりも、体全体のバランスを整えるホメオスタシス(恒常性)調整薬として機能します。

そのため、疼痛・不安・炎症・睡眠・てんかんなど幅広い疾患領域に応用できるのです。

科学的に報告されている作用:

  • 抗炎症・抗酸化:関節炎や炎症性腸疾患における炎症性サイトカイン抑制
  • 抗不安・抗うつ:セロトニン受容体5-HT1A活性化を介して気分安定化
  • 抗けいれん:難治性てんかん(Dravet症候群)に有効性が確認され、FDA承認薬「Epidiolex」に採用
  • 神経保護:アルツハイマーやパーキンソン病の進行抑制に関する報告も

副作用は非常に軽微で、眠気・口渇・軽い下痢などが報告される程度。
THCとの違いは、「効能の幅広さ」と「安全域の広さ」にあります。

この医療としての効果は、アメリカ大統領のトランプ氏も強く言及しています。(2025年10月)

アントラージュ効果

カンナビスには、THCやCBDのほかに100種類以上のカンナビノイドと200種類以上のテルペンが含まれています。

これらが相互に影響し合って全体としての治療効果を高める現象を「アントラージュ効果」と呼びます。

CBDはTHCの副作用(不安・頻脈)を抑えつつ、THCはCBD単独では得にくい即効的な鎮痛を補います。

実際、欧州で承認されている口腔スプレー「Sativex」は、THCとCBDを1:1で配合し、神経痛・多発性硬化症の痙縮に対して高い有効性を示しています。

タイ・ランシット大学での臨床的アプローチ

私たちが提携するランシット大学統合医療研究の医師チームは、患者の症状に応じてTHCとCBDの比率を細かく配合調整しています。

  • がん患者:THC優勢オイルで痛みや吐き気をコントロール
  • 不眠・不安症:CBD優勢オイルを夜間に使用
  • 慢性疼痛・神経疾患:THC:CBD=1:1のバランス型処方

また、マウス実験ではTHC+CBD併用により肺がん腫瘍の縮小が報告されており、
その成果はThe Nation誌(2019年)でも公表されています。

がんに対する医療大麻の効果については、こちらの記事をご覧ください。

THCとCBD、どちらがあなたに向いている?

症状や目的によって、適する成分は異なります。

症状おすすめの主成分理由
がん性疼痛THC+CBD併用強い鎮痛+リラックス
吐き気・食欲不振THC制吐・食欲刺激
不安・不眠・ストレスCBD抗不安・睡眠改善
炎症性疾患CBD抗炎症・免疫調整
神経疾患・けいれんCBD安全な神経保護作用

医師の管理下で使用すれば、THCもCBDも非常に安全で、有効性が高い自然由来の治療手段です。

医療大麻は、単なる植物の薬ではありません。
私たちはこれを、「体と心のバランスを取り戻すためのツール」だと考えています。

THCで痛みをやわらげ、CBDで心を整える。
そのうえで、伝統マッサージ・ハーブ療法・食生活の改善を組み合わせることで、患者が「再び自分の足で立ち上がる」ことを目指します。

医療大麻は、がんを治すためだけでなく、もう一度生きたいと思える時間を取り戻すための医療でもあるのです。

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