こんにちは。いつもnoteをご覧いただき、ありがとうございます。
現在、私たちはタイのバンコクで、タイ伝統医と連携し、医療大麻の処方を扱うクリニックを運営しています。
日本では9年間、CBD専門店「VapeMania®」を運営してきました。
CBD業界ではリラックスや嗜好の発信が中心でしたが、私たちは「医療の可能性」にも力を入れ続けています。
その中で見えてきたのは、CBDが持つ医療としての可能性と、日本という環境ではどうしても超えられない治療の限界でした。
だからこそ、タイ・バンコクでのクリニック開業は、私たちにとって必然だと感じています。
VapeMania®︎のスタート
2017年、VapeMania®︎を始めた当時は、日本でCBDを知る人はほんのわずかでした。
来店される多くの方にとって、CBDはまったく初めての体験です。
だからこそ、世の中の流通の主流がオンラインに変わっていった時代に、私たちはあえて「対面」にこだわる道を選びました。
不安を抱えながらも扉を開けてくださる方に、まずは無料でCBDを試してもらう。
目を合わせ、変化を確かめ、一緒に考える。
その積み重ねこそが、私たちの信頼をつくる唯一の方法だと思ったからです。
そんなある日、届いたレビューは、私たちを大きく揺さぶります。
三叉神経痛に悩んでいた方からの声でした。

「色々呪いが解けたように、出来ることが増えました」
この言葉を前にして、私たちは大きな責任を背負っていることを実感しました。
そして、悔しながら、自分たちだけでは届かない領域があることも痛感しました。
相互作用や既往、慢性痛の機序まで含めて伴走するには、医師と組むしかない――
このレビューが、医療連携と無料相談を始める決心につながったのです。
人生を背負う覚悟
その後、私たちは医師・福田一典先生と出会います。
長年、がんや漢方の臨床に携わり、CBDにも早くから注目していた先生は
「医療の観点から一緒に取り組みましょう」
と背中を押してくれました。

そこから始まった無料医療相談には、数多くの声が届きました。
・パーキンソン病で手が震える方
・肝硬変や高血圧に苦しむ方
・パニック障害や不眠で薬が手放せない方
・小児てんかんを抱えるご家族
相談内容は、リラックス目的でCBDを使う人々とはまったく違う、命の現場に近いものでした。

その中で2019年、佐久山愛ちゃんとの出会いが大きく印象に残っています。
彼女は、難治性癲癇(てんかん)である大田原症候群を患い、当時「3歳まで生きられない」と診断されていました。
そんな彼女を、私たちはPharma Hemp様御協力のもと、支援してきました。
すると、毎日止まらなかった発作が少しずつ減り、最終的には発作が出なくなったのです。
フルスペクトラムCBDとの出会いが奇跡を起こし、愛ちゃんは現在8歳を迎えようとしています。
ところが2023年、愛ちゃんが使用していた製品に含まれる成分 THCV が突如「指定薬物」とされる危機が訪れました。
もし規制されていたら、彼女は効果を感じていた製品を続けられなくなっていたでしょう。
THCVには食欲や代謝、神経系に作用する特徴があり、CBD単独では得られない安定効果をもたらしていたと考えられます。
つまり規制は「生活を支えていた命綱を突然奪う」ことになりかねませんでした。
しかし、ご家族の切実な手紙が国会に届き、厚労大臣は異例の特例許可を下しました。
小さな命が制度を揺るがし、社会を動かした瞬間に立ち会い、私たちは声を上げる大切さを改めて実感しました。
悔しい思い
一方で、別の患者さんは「医療大麻を使ってみたかった」と最後に言い残し、この世を去った方もいます。
その言葉は、今でも胸に突き刺さったままです。
目の前にいる人の「最期の願い」にさえ応えられない。その悔しさは、どうしても拭い去ることができませんでした。
そんな頃、私は医師・福田一典先生に尋ねたことがあります。
「CBDは漢方の中で何位くらいですか?」
先生は少し考えて、「20位には入らないでしょう」と答えました。
「ではTHCは?」
そう聞くと、先生は静かに、迷いなく言いました。
「3位以内には確実に入るでしょう。」
私は、息を飲みました。
CBDにも確かに可能性はある。
けれど、本当に人を救う力を持つのはTHCを含めたフルスペクトラムなのだと。

しかし、日本では、THCを扱うことはできません。
目の前に必要とする人がいるのに、差し出す手段がない。
その現実を突きつけられた瞬間、胸の奥が焼けるように痛みました。
だからこそ、当時飛び込んできたニュースは、私たちの心に光を灯しました。
2018年、タイでは東南アジアで初めて大麻を合法化し、医療大麻の制度を整えようとしていました。
「ここなら、フルスペクトラムを含めて、本当に必要なものを責任を持って届けられるかもしれない。」
そう信じ、私たちは迷いなくタイに拠点を増やす決断をしました。
もちろん、不安は山ほどありました。
言葉も文化も違う土地で、ゼロから信頼を築かなくてはならない。
けれど、あの悔しさを繰り返すくらいなら、挑戦しない理由はありませんでした。
ランシット大学との提携
そして私たちは、タイで医療大麻クリニックを始めることになります。
少しずつ医師との信頼を築き上げ、ついにランシット大学統合医療研究所・副所長であり、医療大麻研究をリードするDr. Waesaming Waehamaが、Greeus® Clinic Bangkokの院長を務めてくださることになりました。

Wea先生は、ランシット大学の研究成果と直結した高い専門性を持ち、伝統医療と医療大麻を架け橋のように統合できる数少ない専門家。
現在の診察も、大学の統合医療研究所から医師に来ていただき、臨床と研究が地続きになった体制が整っています。

素晴らしい医療大麻の専門家が整った今、私の胸の奥には
「これでやっと、多くの人を救える準備が整った」
という確かな実感が湧き上がりました。
ですが、現実は甘くありませんでした。
この3年間のタイで注目されてきたのは「医療」ではなく「娯楽」だったのです。
街には大麻ショップが溢れ、本当に必要とする患者さんのための医療用大麻はほとんど見過ごされてきたのです。
「自分たちのやろうとしていることは、間違っているのだろうか……」
そう思い悩み、不安で眠れない夜を過ごすこともありました。
転機となった回復
それでも、私たちはなんとかクリニックを信じて続けてきました。
そのとき出会ったのが、加門さんでした。
加門さんは、2度の肺がん手術を経て、その後もがん性疼痛に苦しみ、タイに来られたときには「空港のカウンターまで歩けなかった」と語られました。
長く痛み止めに頼り続けていましたが、私たちのクリニックで医師の診察を受け、医療大麻オイルを使い始めました。
すると、だんだんと気力を取り戻し、ついには腫瘍マーカーが下がるまでに至りました。
やつれた表情は少しずつ和らぎ、笑顔が戻っていきました。


加門さんが「医療大麻に出会えて、本当に感謝しています」と語るその姿に、胸の奥が震えました。
あの変化を見た私たちは、このクリニックを継続させていかなくてはならない、と心に誓った瞬間でした。
あの時叶わなかったこと
これまで、救いたくても救えなかった人たちがいました。
法律や環境に阻まれ、目の前の願いに応えられなかった悔しさが、私の中にはいくつも残っています。
でも今は違います。
信頼できる医師とともに、責任ある体制の中で診療できるクリニックという形ができました。
あの時できなかったことを、今ならできる。
これから出会う人に、もっと希望を届けたい。
その思いを胸に、VapeMania®は、そしてGreeus® Clinicは、新たな挑戦を続けていきます。
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